2018年 05月 17日 ( 1 )

 

A story of purchasing the DB5 from Newport Pagnell Vol.3

現在では世界的にクラシックカーから、ネオクラシックといわれる年代まで、メーカー自ら行うレストアレーションの需要が高まっており、フェラーリのクラシケも日本で拠点を開くようですし、また一部のポルシェ・センターではポルシェ・クラシックのサービスが行われています。


当然各サービスが先行している本国の拠点には非常に多くの問い合わせが集まることになります。

後からわかったことですが、それはアストン・マーティン・ワークスも例外ではなく、もはやメールでの初期対応は難しくなっているようでした。

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そこで私はメールを出してから返信がないまま過ぎた三日目にイギリスのニューポートパグネルに電話をしてみました。


意外にも、アストンサイドは非常に丁寧な対応で、遠く日本から初めてコンタクトした私にも、詳細な説明をしてくれたのです。

この時対応してくれた担当者はNigel(以下N氏)といいますが、現在に至るまで全ての窓口となってくれ、後に現地で面会した際も非常にフレンドリーかつプロフェッショナルな対応をしてくれています。


まず彼からの最初の説明は、Worksが扱う車両のレベルについてでした。

アストン・マーティン・ワークスでは車両レベルを1から4まで定義してあり、それは即ち彼らの提供しているサービス内容を意味します。


レベル1は、所謂コンクールコンディションで、場合によっては一度レストアされ販売された車両が、使用歴少なく戻ってきた場合にも各部のチェックの上、認定されます。

多くの愛好家や投資家が求めるクォリティーです。


レベル2は、かつてレベル1のレストアが施されて、ある程度時間や走行距離を重ねたものかつ適切な維持がされてきたもので、コンクールコンディションではないものの、それに準じる素晴らしい状態を表します。

イギリスの顧客の多くはこうした状態から、適度に経年していく愛車を自身で整備しながら維持する事を好むといいます。


レベル3は、走行は可能な状態ですがボディの錆や経年劣化などがチェックされていないもの、つまり確実に隠れた瑕疵がある状態と言って良いでしょう。

このレベルは予算の充分でない方にとっては第一の選択肢になり、予算が潤沢な方にとってはレストアベースになります。

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例えばこのDB4コンバーティブルは非常に綺麗に見えますが、ワークスでボディオフされた事がないため、レベル3に分類されます。

サイドシル下部に触れてみたところ一部は錆で腐っており、パテでごまかしている部分も見受けられました。


レベル4は所謂不動車であり、ボディのみであることも珍しくないそうです。

もちろんレストアベースとしてのみ扱われ、厳重なチェックを経て顧客に提供されます。例えばこの朽ち果てたDB2とおぼしき車両もレベル4に該当すると思われます。

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実際ニューポートパグネルでレストア中だったこちらのDB6は、フレームの大部分を新たに造り直されていました。

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個人的にはエンジンマウント周りの溶接ビードに萌えます。

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これらを踏まえて当然我々は、お客様にレベル1の車両を入手して頂きたいと考えていました。


しかし、現実は厳しくレベル3または4の車両を入手もしくはアストン・ワークスから購入して、レストアパッケージプライス425千ポンドを支払ったとしても、完成までは2年から2年半もの時間がかかるというのです。


「これは、お待ち頂けないだろうな」というのが、その時の私の正直な感想でした。


反面、お客様ご自身に渡英して頂いて現地で打合せをし、ボディカラーから、トリムカラーまで完全にお好みに仕上げることが可能であれば、納車まで長い時間を要するとしても、お客様にとって格別な思い出になるのではないかとも考えました。

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ニューポートパグネルのファクトリー内のトリム部門は非常に小さな工房で、熟練の職人さんが一台一台仕上げています。

シートやドアのインナーパネルについてオリジナルに忠実にステッチやシャーリングのヒダ数などを再現することもできますし、オーナーのお好み次第で独創的なカラーバランスでオーダーする事も出来るようでした。

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そこで、まずはお客様に渡英しての現地打合せをご提案しましたが、やはり多忙につきそれは叶わないとのお返事でした。


しかし、そこで思わぬ僥倖が舞い込みます。

ワークスの担当N氏によると、2年ほど前にレベル1のレストアが完了して、オーナーの元にデリバリーされた車両が戻ってくることになり、僅か走行距離は2,500km程だというのです。


早速、日本へのデリバリー費用を含めて見積もりを依頼すると、そこには驚きの金額が記載されていました。

具体的な金額は伏せますが、レストアベースにレストアパッケージを加味しても15%ほど高額になっています。

レベル1とはいえ、一度は販売され走行もしている車両にもかかわらずです。


実はこれには理由があり、当該車両には様々なスペシャル・オプションが組み込まれていた為でした。


まず大きなオプションはクーラーですが、単純な室内吊り下げ式ではなく、エンジンルーム内にコンプレッサー、エキスパンションタンクなどを設置しており、ブロアモーターの回転数も精密に制御され、快適な空調が得られる仕様となっています。

ただし現代の車でいうエアコンとは異なり冷風と温風をミックスしての温度調節機能はなく、あくまで冷風のみのクーラーです。

温風は従来のダクトを切り替えるレバーでエンジンの熱から導風されるため、マニュアル・エアコン相当に近いと考えて良いと思います。

このクーラーのオプション価格は3万ポンドというから驚きです。


またパワーステアリングも導入されており、EZ社という現在クラシックカー市場ではほぼ独占のトップ企業の製品が採用されていました。

しかもアシスト量は無段階可変の仕様となっています。

通常選択すれば、価格1万5千ポンドが加算されます。

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さらに他のオプションも備えられますが、とにかくこれらの理由で、オプション価格を加味しても新規レストアに比して同等プラスアルファのプライスが付けられていました。


さて果たしてお客様の出した結論はどの様なものだったか…(このブログをご覧になっている時点で展開はお分かりでしょうけれど…)


そして、私はこのころから平行してクラシックカーの輸入に伴う法規上の問題などを調べ始めており、国土交通省の知人に車検を統括する部署(独法)を紹介してもらい、国交省WEB上の

書類をダウンロードして読み込んだりしていました。


もともと自身でも車両を輸入しようと検討したことがあり、ある程度の知識はありましたが、1970年以前の車両については改めて調査が必要でした。


幸いなことに、自動車は年式が古いほど、適用になる法規も緩やかになり、1963年から1965年の2年間あまりに製造されたDB5に対してはさほど厳しい法規は適用されないように思われました。


いずれにしても、実際に輸入にあたっては、通関は私どもの普段の業務とほぼ同じですから問題はないとしても、ナンバー取得となると、クラシックカーの登録業務に通じたプロフェッショナルのファクトリーに依頼しなくてはなりません。

イギリス車はインチネジが普通ですし、珍しいボルト・ナットが採用されていることもあります。


私は知人友人にも知恵を借りてDB5に最適と思えるファクトリーに作業見積もりを依頼したのでした。


ここに至って、あるいはお客様の回答がどの様なものであれ、私自身車好きの好奇心が優っていたのかもしれません。


Vol.2の記事はこちら

Vol.4の記事はこちら


  by pp5396 | 2018-05-17 04:17 | Aston Martin | Trackback | Comments(1)

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