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A story of purchasing the DB5 from Newport Pagnell Vol.10

さて、今回でDB5の購入記もいったん最終回となります。
また機会があれば、様々なエピソードをご紹介したいと思っています。

最終回は、どのように遠く日本から離れた、ニューポート・パグネルからこの素晴らしいDB5がやって来て、お客様の元へお届けしたかをご紹介しましょう。
アストン・マーティン・ワークスのN氏はデリバリーに先立って、DB5に素晴らしいコーティングを施してくれました。
ちなみに通常Coatingでも通じますが、イギリスではDetailingといいます。
セラミック・コーティングという比較的新しい技術が採用されていました。

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No discussion、言葉はありません。


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塗装面、メッキパーツも同様に美しい仕上がりです。

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同様に下回りもすべて作業されています。

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足回りも同様の処理がなされています。

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室内のメーターパネル、シートなどの皮革面にも処理が可能なタイプです。

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ワイヤータイプのホイールも極めて美しい仕上がりです。

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5月のはじめ、あいにくの天候の中DB5はNew Portpagnellを旅立ちました。スペシャルなトランスポーターを使用し、付添人が空港まで見守ってくれます。


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ロンドン・ヒースロー空港到着後、専用のパレットに車両を固定していきます。


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車両の空輸を手がける専門の会社が作業を行うため、車両の特性に応じて確実な方法でパレットにタイヤを固定していきます。

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タイベルトのかけ方や、プーラーのテンションのかけ具合などやはり専門業者のノウハウは侮れません。

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最後に特注のカバーを掛けられ、下部をビニルラップで保護します。

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車両はルクセンブルグで、トランスファーするため別の航空機に積み替えられます。専用のリフト車で運ばれてきた車両の様子です。

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このように、機首が開き車両が内部に積み込まれていきます。姿からすると貨物用のボーイング747の様です。
この便は原則、週1回程度日本へやってくるようで、運行はGargolux、提携は日本貨物航空で、日本国内のハンドリングはNCAが担当してくれました。

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車両は無事成田空港に到着し、荷受けに行ってきました。物が大きいためか、なかなか保税地区まで届かず、空港で2時間ほど待機し、その後税関へ赴き、輸入申告と消費税の納税を済ませました。
この辺りは時計の業務と同様ですが、車両ならではの複雑な手続きもあります。
幸い事前に調査してあったため、手続きについてはスムーズに完了しました。
しかし、手続きが完了したのは夜の10時を回っていました。
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しっかり荷造りされたアストン・マーティン DB5は、全く問題なく約9,000kmをフライトしてきました。


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翌日改めて成田空港へ行き、フォークリフトで車両をパレット車から下ろしてもらい、荷ほどきを行います。


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その後予め手配してあった、カーゴタイプの積載車へ車両を積み込み、登録のために整備工場へ向かいます。

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クラシックカーのため、シャーシにフックをかける場所は無く、あったとしてもフレームの強度上固定は避けたいところです。この積載車はタイヤを直接荷台に固定できる特殊構造となっており、ここでも専門業者のノウハウに助けられました。

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積載完了し、整備工場へ出発です。

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空港から一時間半ほどで、整備工場へ到着、荷下ろしをします。

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フロントのフレーム下部に車台番号となる、シャーシーナンバーが刻印されています。
しかしこのとき、分厚いアンダーコートに完全に隠れた状態でした。
さすがに専門工場のスタッフ方はすぐに、打刻位置を特定してアンダーコートを最小限はがしていきます。(セキュリティ上画像では番号を隠しています)

私も現地イギリスのN氏に改めて打刻位置を確認したところ、やはりこの位置で間違いないとの回答を得たため安心して作業を見守りました。
その後、無事シャーシーナンバーを確認でき、謄写を行い、登録のため予備検査へ進むことができました。

リサイクル券の発行に多少時間を要しましたが、その他の大きな改修は不要で、さすがにメーカーであるAston Martin Worksの底力を感じました。
その後日本のナンバーを固定するナンバーステーをSUSで製作してもらい、予備検査取得済みの状態でお客様のご自宅まで回送の手はずとなりました。

こういったクラシックカーや少量生産車は、通常ナンバー取得のため陸運支局などに、車両を持ち込まないとなりません。
しかし、お届けのために特殊な回送車を手配していることもあり、回送途中の立ち寄りは避けたいところでした。

そこで今回あまり知られていない手段として、現地の行政書士の先生に出張封印という作業を依頼しました。
これは、予め登録用の書類を郵送すると、職権でナンバーを申請してプレートを持参の上、車両に取付封印してくれる仕組みです。
ナンバー取付時にシャーシーナンバーの確認など、一定の作業は発生します。

さて、いよいよ納車の日がやってきました。

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今回も専用のカーゴタイプの回送車で運ばれてきたDB5は、ゆっくりとトレーに載ったまま現れました。

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トレーにはやはり、すべてのタイヤで固定されています。

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パレットは完全に地面にフラットに降りてくるタイプのため、安全に荷下ろしが出来ます。

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お客様のガレージにしっかりと納まったDB5、美しい佇まいです。
時系列的には前後しますが、この後に行政書士の先生がいらして、ナンバーを取り付けていかれました。
これでいつでも走り出せる状態となりました。

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さよならDB5、また会う日まで。
自分自身の車ではもちろん無く、管理上も手元にあったわけでも無かったDB5ですが、ガレージのシャッターが閉まったとき、少しだけ感傷的な気持ちになりました。
オーナー様、今回もいろいろと勉強させて頂きました。
辛抱強くお待ち頂き、心より感謝申し上げます。
素晴らしいドライブをお楽しみくださいませ。

Vol.9の記事はこちら

  by pp5396 | 2018-06-07 04:17 | Aston Martin | Trackback | Comments(2)

A story of purchasing the DB5 from Newport Pagnell Vol.9

今日はDB5のエンジンについてお話ししましょう。
エンジンは当時のエンジンブロックやヘッドを使用しつつ、内部のピストン及びシリンダースリーブ、バルブなどはすべて新しい部品を用いてオーバーホールされています。

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この画像は見やすくするために回転させてありますが、ピストンとコンロッドを組み込んだ後、シリンダーブロックの下部から撮影したものです。
この部分にオイルパンが組み付けられることになります。
ブロックの面を見ると平滑に仕上げられ、シール性能を最大限発揮できるように準備されています。

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こちらはピストンを組み付けた後、シリンダーヘッド側から撮影した画像ですが、同様に見やすいように回転させてあります。
完璧な平面が出され、この後ガスケットを挟みシリンダーヘッドがヘッドボルトで締結されることになります。

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こちらは専用の平面研削盤で、ヘッドの面研を行っているところです。
このシリンダーヘッドの下部面は、エンジンの各気筒の爆発を受ける重要な部位になります。
僅かにバルブホールが見えますが、シリンダーブロックとヘッド下部の間にガスケットを確実に取り付けるため、また圧縮比を適正に確保するために精度が要求される作業です。

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エンジンはすべてのパーツが全分解の状態から組み立てられ、ベンチテストを経てエンジンベイに設置されます。エンジンフードを開けると非常に美しい仕上がりで、Vintage PATEK PHHILIPPEの仕上がりに通じるものを感じます。

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エンジンの点火タイミングをコントロールするディストリビューターは旧来のカムシャフトから回転をとるシステムですが、さすがに進角はガバナーやダイアフラムではなく、インテークマニホールドの負圧をセンシングした、いわゆるセミトラの構造になっています。
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冷却性能は出力向上やハイスペックなクーラー設置に伴い、同様に大きく向上しておりファンシュラウドも美しい仕上げとなっています。
ホース類も現代的な高性能シリコン製品を採用し、耐久性も十分です。

さていよいよ、次回のDB5の購入記は最終回、デリバリーに関する記事になる予定です。

Vol.8の記事はこちら
Vol.10最終回の記事はこちら

  by pp5396 | 2018-06-05 04:17 | Aston Martin | Trackback | Comments(0)

A story of purchasing the DB5 from Newport Pagnell Vol.8

今日はDB5の内装のレストア工程について少しご紹介します。
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ドライバーズシートのレストア前の状況
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ドライバーズシートのレストア後の状況

これらの画像を見比べると、オリジナルに忠実にレストアが行われていることが分かります。
ナチュラルなレザーの光沢具合や、シートの張りの再現は経験のいる作業かと思われます。
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ファクトリーで縫製されているシートのレーザパーツ

ファクトリーで聞いた担当者からの話では、こうしたシートの襞の数も忠実に再現しており、内部の充填物の材料にも気を配っているとのことでした。
安価で扱いやすいウレタン系などを安易に用いると、当初は良い状態でも経年劣化によって粉体化してしまい、つぶれたままの状態になってしまうとのことです。
アストンでは極力天然素材などを用い、長い間には経年劣化はあるにしても非常に緩やかで自然な形で変化する素材を採用しているとのことでした。
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リアシートもパンッと張りがあり、しかし触れてみると決して固すぎない絶妙なシートの張り具合となっています。
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シート部分のレストア前の画像

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シートのレストア後の画像


リートはフレームごと外され、分解・清掃、パーツ交換の上でレザーが張り替えられています。
この年代はシートバックのロックがついておらず、リクライニングの調整はダイアルで無段階に行えますが、手で押すだけで、シートバックは前に倒れる仕様です。

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ナビシート側のレストア後の画像


やはり美しい仕上がりにうっとりします。この時代の車としてはシートは大ぶりで、ボディサイズからいってもGTとして使われる車であったということでしょう。
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ステアリングも当然レストアされており、その感触はほぼ新車のコンディションです。
こういった細目のステアリングにはドライビンググローブが似合います。
また実際にグローブをした方が運転もしやすいです。
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室内のマット類はすべて新品で製作し直しています。
ドライバビリティに大きく影響するペダルのゴム類も新品に交換されています。

さて、このDB5の記事も佳境に入ってきました。
あとはエンジン関係と、デリバリーの様子をお伝えするため残り2回程で一旦区切りを付けたいと考えています。
時計屋のブログですが、ヴィンテージ・アストン・マーティンの物語、今しばらくお付き合い頂ければ幸いです。

Vol.7の記事はこちら
Vol.9の記事はこちら

  by pp5396 | 2018-05-30 11:55 | Aston Martin | Trackback | Comments(0)

A story of purchasing the DB5 from Newport Pagnell Vol.7

私がNewport Pagnellのファクトリーを訪れた日も、規則正しいハンマーを打ち下ろす音がショールームにも絶えず聞こえていました。
今回のDB5がレストアされた記録の画像とともにその工程を振り返ってみましょう。
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経験に裏打ちされた確かな職人技と、正確なデータに基づいた数値管理により一枚のアルミ板から複雑な曲線を持ったボディパネルが造り出されていきます。

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各パネルは、決められた接続代を設定されており、最終的に基準となるモールドにあてがわれて形状を確認後、溶接し一体化したボディとなります。

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当時から使われていたというボディー用のモールド、年季が入っています。

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フロントセクションが概ね完成したところです。


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各付属パーツを仮付けし、取り合いを確認していきます。
この後、何度も修正、仮付けを繰り返し精度を上げていくことになります。
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リアセクションもほぼ完成し、まさにDB5のテールらしくなりました。一番上の画像が左側のテールを含んだパネルだということがおわかりでしょうか。


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今回フロアパネルも一新されており、こちらはドライバーズシートからリア方向を振り返った位置関係の画像になります。

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こちらのフロアパネルの画像はリアのセンターから前方を撮影した画像です。
ドライバーズシート後方は、作業性のためかメンテナンスを考慮してか、開放構造になっています。
こういった画像もレストア時以外は、新車当時でなければまず見ることは出来ませんし、その時代はカメラの性能がそれほど良くありませんから、かなり貴重な画像になりますね。

Vol.6の記事はこちら
Vol.8の記事はこちら

  by pp5396 | 2018-05-25 17:38 | Aston Martin | Trackback | Comments(2)

A story of purchasing the DB5 from Newport Pagnell Vol.6

今日はアストン・マーティン・ワークスによる、新車以上というレストアの様子を、前回記事のボディワーク編につづいてご紹介します。
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フロントサスペンションはすべて新品パーツか、オーバーホール済みのパーツで構成されています。
ダンパーは当時よりも性能のよい、現代の交通事情にあったスペックが与えられています。

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リアサスペンションも同様に完全にレストアされていますが、アクスルの支持方法など、オリジナルに忠実な構造です。

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ホイールもスポークの一本一本までリメッキ・レストアされています。

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下回りもシャーシ防錆のため、厚くアンダーコートが施されていますが、新車当時はこれほどの保護はされていなかったのではないでしょうか。

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エグゾーストパイプはすべてステンレス・スティール製となっており、耐久性も抜群です。
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当時ZF製といわれた5速ギアボックスもすべて分解され、ケーシングはもとより仕上げを完璧に行い、内部ギアもリフィニッシュされています。

次回はレストア作業の様子を、画像をまじえてご紹介したいと考えています。

Vol.5の記事はこちら
Vol.7の記事はこちら

  by pp5396 | 2018-05-23 04:17 | Aston Martin | Trackback | Comments(0)

A story of purchasing the DB5 from Newport Pagnell Vol.5

今回から、記事数回にわたってAston Martin Worksによってレストア・レコードとして撮影された素晴らしい画像の一部をご紹介します。
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ファクトリーの前で撮影されたレストア作業完成後の車両

まず、レストア車両の候補として認められるためには、各部を分解した上で、目視などの検査を受けます。
その後、車両全体を3Dスキャンし、ボディーの左右対称性や歪みなどがチェックされます。

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これは3Dスキャンされた結果、ボディーの各部位の数値が明らかになったチャートです。
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結果的にこの車両はオリジナリティに問題は無かったようで、この後レストア作業に進むことになります。
アストン側は、ボディの錆や腐りはあまり問題ではなく、正式な手順によらないパネルの切り貼りや、オリジナルと異なる素材・製法が用いられるなどメーカー以外の手が入っている場合に問題が起きやすいといっていました。

やはり多くの車両で手間や費用を惜しんで、ボディワークを端折り、場合によってはパテやパネルでのカバーなどで誤魔化していることが見受けられるとのことです。
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実際の車両のボディチェック、治具の上で正確に測定されています。

正確なディメンションを確認するために、治具の上に据え付けられボディーワークが始まります。
シャシーのベース部分はスティール製であり、錆の影響が大きい部位ですから徹底的にレストアされます。

ボディーワークの後は、スティールのシャシーとアルミ製のパネルの間で起こる電食を防ぐために、スーパーレッジェーラ工法のパイプフレームなどに高品質のパウダーコートが施されます。
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塗装は完全循環式の専用ブースで、下塗り、中塗りを経て仕上げへと進みます。

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トップコートは数回に分けて塗装と研磨を繰り返して仕上げられていきます。

次回は、ギアボックスやサスペンション周りなど、普段はなかなか見られない部位について、新車同様か新車以上のクオリティで仕上げられたディティールを画像と共にご紹介します。

Vol.4の記事はこちら
Vol.6の記事はこちら


  by pp5396 | 2018-05-21 04:17 | Aston Martin | Trackback | Comments(0)

A story of purchasing the DB5 from Newport Pagnell Vol.4

このブログ記事のタイトルが示す様に、お客様は私どもが作成した概算見積書をご覧になり即座に購入を決断されました。

一言、「このプレミアム価格は、言うなれば時間を買うという意味になりますね」と添えられたことが印象的でした。


今考えてもこれは本質をついた考察をされたと思います。

それは、私がニューポートパグネルのアストン・マーティン・ワークスのショールームで出会ったイギリス人と思しき紳士の言葉が忘れられられないからです。


私が納車の打合せの為に、担当のN氏を彼の地に訪ねたとき、ショールームには美しく仕上げられたシルバーバーチのDB5が「SOLD 」と表示されたパネルと共に置かれていました。

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我々がニューポートパグネルを訪問した日、担当N氏はわざわざ展示ブースを作って、車両を展示しておいてくれたのです。

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私がその佇まいに感動を覚えつつドアハンドルに手をかけたとき、一人の紳士が声を掛けてきました。

「あなたがこの車を購入したのですか?」

私はとっさに「はい、そうです」と答えると、その紳士は「あなたが本当に羨ましいですよ、おめでとう」と”jealous”という単語を使い仰ったのでした。


私は少しこそばゆく感じながら、本来ならお客様ご自身がこのある種の祝福ともいえる言葉を受けられるべきなのだろうと思ったのでした。


後に担当N氏によれば、この車両に対する引き合いは複数あり、やはり需要の強さを感じたのです。


やや時間を戻しますが、実際にオーダーを出すことを決定してからは実務的には作業が山積みでした。


まず最終的な価格交渉を行い費用総額を決定、その後は配送の手配(配送の手段は、アストン側もお客様側も異論なく空輸の選択肢のみでした)の調整など基本的にはアストン側がその殆どをワンストップで手配してくれます。

ちなみに空輸にかかる総費用は約2万ポンド強、内保険料が9,000ポンド程となっています。


しかし私どもでは念のため、登録にあたり国内法規への対応確認や通関手順の確認、国内配送業社の選定、国内登録の実務を依頼する専門工場との打合せ、あわせて総費用の概算算定の修正など、やるべき項目は多岐に渡りました。


さて、次回の記事ではDB5の詳細画像が登場予定です。

素晴らしいレストアレーションが施されたディテールと、アストン側のきめ細かい対応について、一部をご紹介する予定です。

今、私がいえることはAston Martin Worksは決して車というモノだけを販売しているのではありません。

そのフィロソフィーと共に車の形をした別の何かを顧客のもとへ届けようとしているのです。


Vol.3の記事はこちら

Vol.5の記事はこちら


  by pp5396 | 2018-05-19 04:17 | Aston Martin | Trackback | Comments(0)

A story of purchasing the DB5 from Newport Pagnell Vol.3

現在では世界的にクラシックカーから、ネオクラシックといわれる年代まで、メーカー自ら行うレストアレーションの需要が高まっており、フェラーリのクラシケも日本で拠点を開くようですし、また一部のポルシェ・センターではポルシェ・クラシックのサービスが行われています。


当然各サービスが先行している本国の拠点には非常に多くの問い合わせが集まることになります。

後からわかったことですが、それはアストン・マーティン・ワークスも例外ではなく、もはやメールでの初期対応は難しくなっているようでした。

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そこで私はメールを出してから返信がないまま過ぎた三日目にイギリスのニューポートパグネルに電話をしてみました。


意外にも、アストンサイドは非常に丁寧な対応で、遠く日本から初めてコンタクトした私にも、詳細な説明をしてくれたのです。

この時対応してくれた担当者はNigel(以下N氏)といいますが、現在に至るまで全ての窓口となってくれ、後に現地で面会した際も非常にフレンドリーかつプロフェッショナルな対応をしてくれています。


まず彼からの最初の説明は、Worksが扱う車両のレベルについてでした。

アストン・マーティン・ワークスでは車両レベルを1から4まで定義してあり、それは即ち彼らの提供しているサービス内容を意味します。


レベル1は、所謂コンクールコンディションで、場合によっては一度レストアされ販売された車両が、使用歴少なく戻ってきた場合にも各部のチェックの上、認定されます。

多くの愛好家や投資家が求めるクォリティーです。


レベル2は、かつてレベル1のレストアが施されて、ある程度時間や走行距離を重ねたものかつ適切な維持がされてきたもので、コンクールコンディションではないものの、それに準じる素晴らしい状態を表します。

イギリスの顧客の多くはこうした状態から、適度に経年していく愛車を自身で整備しながら維持する事を好むといいます。


レベル3は、走行は可能な状態ですがボディの錆や経年劣化などがチェックされていないもの、つまり確実に隠れた瑕疵がある状態と言って良いでしょう。

このレベルは予算の充分でない方にとっては第一の選択肢になり、予算が潤沢な方にとってはレストアベースになります。

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例えばこのDB4コンバーティブルは非常に綺麗に見えますが、ワークスでボディオフされた事がないため、レベル3に分類されます。

サイドシル下部に触れてみたところ一部は錆で腐っており、パテでごまかしている部分も見受けられました。


レベル4は所謂不動車であり、ボディのみであることも珍しくないそうです。

もちろんレストアベースとしてのみ扱われ、厳重なチェックを経て顧客に提供されます。例えばこの朽ち果てたDB2とおぼしき車両もレベル4に該当すると思われます。

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実際ニューポートパグネルでレストア中だったこちらのDB6は、フレームの大部分を新たに造り直されていました。

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個人的にはエンジンマウント周りの溶接ビードに萌えます。

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これらを踏まえて当然我々は、お客様にレベル1の車両を入手して頂きたいと考えていました。


しかし、現実は厳しくレベル3または4の車両を入手もしくはアストン・ワークスから購入して、レストアパッケージプライス425千ポンドを支払ったとしても、完成までは2年から2年半もの時間がかかるというのです。


「これは、お待ち頂けないだろうな」というのが、その時の私の正直な感想でした。


反面、お客様ご自身に渡英して頂いて現地で打合せをし、ボディカラーから、トリムカラーまで完全にお好みに仕上げることが可能であれば、納車まで長い時間を要するとしても、お客様にとって格別な思い出になるのではないかとも考えました。

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ニューポートパグネルのファクトリー内のトリム部門は非常に小さな工房で、熟練の職人さんが一台一台仕上げています。

シートやドアのインナーパネルについてオリジナルに忠実にステッチやシャーリングのヒダ数などを再現することもできますし、オーナーのお好み次第で独創的なカラーバランスでオーダーする事も出来るようでした。

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そこで、まずはお客様に渡英しての現地打合せをご提案しましたが、やはり多忙につきそれは叶わないとのお返事でした。


しかし、そこで思わぬ僥倖が舞い込みます。

ワークスの担当N氏によると、2年ほど前にレベル1のレストアが完了して、オーナーの元にデリバリーされた車両が戻ってくることになり、僅か走行距離は2,500km程だというのです。


早速、日本へのデリバリー費用を含めて見積もりを依頼すると、そこには驚きの金額が記載されていました。

具体的な金額は伏せますが、レストアベースにレストアパッケージを加味しても15%ほど高額になっています。

レベル1とはいえ、一度は販売され走行もしている車両にもかかわらずです。


実はこれには理由があり、当該車両には様々なスペシャル・オプションが組み込まれていた為でした。


まず大きなオプションはクーラーですが、単純な室内吊り下げ式ではなく、エンジンルーム内にコンプレッサー、エキスパンションタンクなどを設置しており、ブロアモーターの回転数も精密に制御され、快適な空調が得られる仕様となっています。

ただし現代の車でいうエアコンとは異なり冷風と温風をミックスしての温度調節機能はなく、あくまで冷風のみのクーラーです。

温風は従来のダクトを切り替えるレバーでエンジンの熱から導風されるため、マニュアル・エアコン相当に近いと考えて良いと思います。

このクーラーのオプション価格は3万ポンドというから驚きです。


またパワーステアリングも導入されており、EZ社という現在クラシックカー市場ではほぼ独占のトップ企業の製品が採用されていました。

しかもアシスト量は無段階可変の仕様となっています。

通常選択すれば、価格1万5千ポンドが加算されます。

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さらに他のオプションも備えられますが、とにかくこれらの理由で、オプション価格を加味しても新規レストアに比して同等プラスアルファのプライスが付けられていました。


さて果たしてお客様の出した結論はどの様なものだったか…(このブログをご覧になっている時点で展開はお分かりでしょうけれど…)


そして、私はこのころから平行してクラシックカーの輸入に伴う法規上の問題などを調べ始めており、国土交通省の知人に車検を統括する部署(独法)を紹介してもらい、国交省WEB上の

書類をダウンロードして読み込んだりしていました。


もともと自身でも車両を輸入しようと検討したことがあり、ある程度の知識はありましたが、1970年以前の車両については改めて調査が必要でした。


幸いなことに、自動車は年式が古いほど、適用になる法規も緩やかになり、1963年から1965年の2年間あまりに製造されたDB5に対してはさほど厳しい法規は適用されないように思われました。


いずれにしても、実際に輸入にあたっては、通関は私どもの普段の業務とほぼ同じですから問題はないとしても、ナンバー取得となると、クラシックカーの登録業務に通じたプロフェッショナルのファクトリーに依頼しなくてはなりません。

イギリス車はインチネジが普通ですし、珍しいボルト・ナットが採用されていることもあります。


私は知人友人にも知恵を借りてDB5に最適と思えるファクトリーに作業見積もりを依頼したのでした。


ここに至って、あるいはお客様の回答がどの様なものであれ、私自身車好きの好奇心が優っていたのかもしれません。


Vol.2の記事はこちら

Vol.4の記事はこちら


  by pp5396 | 2018-05-17 04:17 | Aston Martin | Trackback | Comments(1)

A story of purchasing the DB5 from Newport Pagnell Vol.2

まず私がした事は、世界のDB5のマーケット、バリュー、そのスタンダードを分析する事でした。
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DB5のマーケット形成には一つのマイルストーンがあります。
この1964年製DB5/登録ナンバーFMP 7Bの車両は007/ゴールドフィンガー及びサンダーボールの劇中で使用された、ある意味本物のボンドカーです。
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2010年10月27日、ロンドンで開催されたRMオークションで、2,912,000GBPで落札されました。
これは当時のレートでは4,608,500USDに相当します。
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映画撮影で使用された実物、という付加価値が特別な物であるにせよ、オークショニアのハンマーが振り下ろされた瞬間、DB5の存在がより特別なものになった、といっても過言ではないでしょう。

それ以前から人気が高い車種ではあったのですが、オークション後には世界各地でDB5の価格が一層上昇し、それに伴いDB4やDB6の価格も高くなっていきます。
外観に大きな相違のないDB4 Sr.4 Vantage及びDB4 Sr.5は、コンディションによってはDB5とさほど変わらないプライスが付けられていることもあります。

また2107年12月2日には、ロンドンで開催されたBonhamsのオークションで、Sir. Paul McCartneyがかつて所有したDB5が1,345,500GBPで落札されています。
これは今日のレート@148に加えて日本での消費税を加味すると2億1千500万円ほどにもなります。
著名人のプレミアムということももちろんありますが、この個体は複数回オークションにかけられており、前回の落札価格は日本円で4,000万円ほどでした。

見方を変えれば、クラシック・アストン・マーティンのレストアを得意とするファクトリーにとっては大きなビジネスチャンスであり、現役で走行できる個体のみならず、草原に放置されていた錆びたボディや納屋で眠りについていたお爺ちゃんの遺産を錬金術の如く、ミリオンカーに仕立てる機会を得たことを意味していました。

結果それまでより多くの個体がレストアされマーケットに供給されたにもかかわらず、旺盛な需要はそれを軽々と飲み込んで、DB5(と前後シリーズ)は欲しいけれど買うことが出来ないというLuxuryかつPremiumな状況に置かれることになっていきました。

DB5のクーペボディはわずか1,023台の製造といわれていますが、需給の逼迫は価格の上昇とともに、ファクトリー間の競争によりそのレストア品質も急速にレベルアップさせていったのです。

私はこの調査を始めてしばらくしてから、無意識のうちにお客様にはベース車両の購入及びハイレベルなレストアレーションの組み合わせをお勧めしようと考えていたと思います。
ボディカラーが自由になることや内装色の組合せを選べるであろうことも理由だったかもしれませんが、Vintage Carにおいてはレストア・レコードというある種のエビデンスが重要な要素であることに気付いていったからです。
助言してくれた海外の友人でクラシックカーコレクターの方の意見もその方向を示唆していましたし、オークション会社のスペシャリストの意見も同様なものでした。

しかし問題は、どのようなルートでベース車両を見つけ、どこのファクトリーにレストア作業を依頼するかという事でした。

次第に眼目は販売されている車両そのものではなく、ファクトリーの技術水準や実績の調査などへ移っていったのです。

イギリス車メーカーの多くは、過去に販売した車両-Heritage-を大切にしており、Aston Martinはもとより、Bentley(含むCrewe RR), Jaguarなどもメーカー自身が過去に販売した車両のパーツを誠実に供給しているほか、消耗パーツなどは純正品だけではなくOEM品も豊富にあり、そのほかオリジナルを下取る形のリビルトパーツも大きなマーケットを形成しています。
したがって英国のクラシックカー・レストア・マーケットは、プロ・アマチュア問わず、活況である事がわかってきました。

では、バックヤードビルドの文化を持ち、ハンドワークやクラフトマンシップを大切にする英国においても特別な地位を確立しているアストン・マーティンのベストなレストア・ファクトリーはどこなのか?
私はさらに調査を進めていきました。

ミラノにあったカロッツェリア・トゥーリングの設計によるスーパーレッジェーラ製法を導入し、組み立てられたDB5の構造は極めて繊細かつ複雑で、完全なレストアには高度な技術と蓄積されたノウハウが必要になります。
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DB5はスティールフレームにアルミのボディパネルという構造であることから、電食を防ぐ塗装技術は重要な要素の一つで、単に美しいボディ塗装が出来ればよいというものではありません。(例えば現在ではフレームには高品質な粉体塗装が採用されています、この意味でも新車以上の技術が採用されているといえます)
またアルミパネルには原則としてパテ盛り整形を行わないことが望ましいとされていますから、複雑な曲線のアルミ製ボディパネルの成型が出来る技術を持っている必要があります。

参考にした書籍によれば、現在イギリスにはクラシック・アストン・マーティンのレストアで名声を得たファクトリーが5社あるといいます。
実際は更に多くの素晴らしい会社が存在するでしょう。

マニュアル、パーツ販売なども幅広く手掛け比較的規模の大きいAston Workshop(Since 1988), リペア用の独自コンポーネントを商品化しているRS Williams(Since 1968), 30年以上の歴史を持つAston Engineering(not found the website), アストン出身の技術者を多く抱えるDesmond J Smail(Since 1976)

そして、今回私たちがコンタクトしたAston Martin Worksはれっきとしたメーカーのレストア部門であり、近年規模の拡大に伴いニューポート・パグネルの施設の一部はシームレスにモダーン・アストン部門と共有されているものの、組織としては分社化されておりアストン・マーティン・グループを構成しています。
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そこでまず公式サイトを通じて問い合わせのメールを出しましたが、1日経っても2日過ぎても返信がありません。
イギリスとは時差が8-9時間(季節により)ありますが反応が悪いな、という印象でした。

しかし、のちに私の認識が甘すぎた事を思い知るのです。
Vol.1の記事はこちら
Vol.3の記事はこちら

  by pp5396 | 2018-05-09 04:17 | Aston Martin | Trackback | Comments(2)

A story of purchasing the DB5 from Newport Pagnell Vol.1

それは一通のメールから始まったお話でした。
時計でお世話になっているお客様から、Aston Martin DB5を探しているのだけれど情報はありませんか、という内容でした。
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やはりDB5といえば初代ボンドのショーン・コネリーが似合います。
個人的には当代ボンドのダニエル・クレイグはコネリーとは別の形で、ボンドを体現していると思います。
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一番好きな彼の主演作はスカイフォールですが、それについてはまた書くこともあるかもしれません。

弊社はVintage専門の時計店ですが、Authentic, Heritage, tradition, vintage, classic, antiqueなど、時計と車に共通したKeywordsからご相談いただいたのでしょう。
また私自身も車が好きで、高価ではありませんが常に何台かの車を使っていますし、車関係の友人もプロ、セミプロ、ハイアマチュアと沢山の方々とおつき合いさせて頂いています。

そのため当初は国内外から様々な情報を集めることができ、実際にお客様にも何台かのお車を内覧頂きました。

しかし非常にコンディションの良い個体であっても、ご家族からボディカラーのお好みについてご意向があったり、また別の個体はコンディションとプライスのバランスが今ひとつだったり…
ある海外の個体は、連絡を取るか検討しているうちに売れてしまったりしました。

私はいろいろと考えながら、気分転換にGold Fingerを見たりしました。
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言わずと知れた007シリーズ第三弾、タイトルロールはショーン・コネリーです。
劇中の愛車、ボンドカーはもちろんDB5です。

私はその時、Blu-Ray Discのパッケージを眺めていました…「世の中にはルールがある」…劇中のセリフからとった何気ない日本版の帯書きでしたが、次第に私の中で何かが形になって行くのがわかりました。

Vol.2の記事はこちら
プロローグ編の記事はこちら

  by pp5396 | 2018-05-07 04:17 | Aston Martin | Trackback | Comments(0)

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